家業の織屋に生まれ育ち、そしてその家業を引き継いで今日まで帯や着尺を織って参りました。帯や着尺を織ることが自分の使命であり、人生であり、生きがいでもあります。織機と手織の機の音のする工場の一角に私が使っている部屋があります。私はその北側の窓越しに意匠を考え、糸の色を選択する日々を送っています。移りゆく季節を考え、装いの目的を想像し、どのような方がどのような後ろ姿を演出してくださるかなどを想像します。これはとてもいい時間で大好きな仕事です。
ご存じのように日本では着物離れが急速に進んでおります。ただ好きなものを皆様の喜ぶ姿を想像して製造しているだけでは、成り立たなくなっているのも現実です。その原因は様々です。ライフスタイルや価値観の変化。流通システムの変化や世界的不況の波など織屋を取り巻く環境は、厳しさの一途です。そして私といえば、マネージメントや経営業務は必ずしも得意とは言い難いです。しかし、織屋として140年余続けて来た中で、時代はいつだって厳しく、楽なことはめったになかったように記憶します。
「価格が高い、着るに面倒、敷居が高い」などなど、厳しいご意見を頂戴しています。
厳しい今の現実をしっかりと踏まえ、当社の社訓でもある「誠実是最上」を心の拠り所とし、スタッフ一丸となって、新たな織の世界の創造を目指し、2011年の創業150年を元気に越える所存です。
世界には様々な美しい衣装が多々ありますが、こと日本の女性や男性を美しく装わせる衣装といえば、やはり着物が一番ではないでしょうか。我田引水と言われても、少なくとも私はそのように思えます。

「誠実是最上」(せいじつこれさいじょう)は西村織物(株)の社訓です。
大正・昭和にかけて福岡県太宰府に居をかまえ活躍した、書家古賀井卿氏に揮号いただきました。本社事務所に掲げております。