生絹
2010/08/20
生絹と書いて「せいけん」「きぎぬ」「すずし」と三様に読みます。 精練していない状態の
絹糸あるいは絹織物です。 ごわごわした、ちょっと固い感触です。仕立てあがりに張り
のある突っ張った着物になります。 「織屋にしむら」ではもっぱらこれを「すずし」と申してい
ます。ちなみに「織屋にしむら」では、すずしの着尺とすずしの帯の両方を織っています。
過日、100年位前にお召しになっていたであろう夏着物を見せていただきました。 さるお方から
寄贈されて、「博多織献上館にしむら」で大切に保管されている着物です。 それが下の写真です。
現在のすずしの肌触りより、さらに固めです。 小さな灰色の楕円形が規則正しく配置され、その
灰色の楕円形が、遠くから見ると横に縞を置いたように見えます。 手元で見ると地味に見え
ますが、遠くから見るとかなり大胆な感じを受けます。よく計算された意匠デザインと感銘を
受けました。明治の終わり頃、どのような社会通念や背景の中で、どのようにな暮らしの中で、
これをお召しになっていた女性の自己表現の一役を担っていたわけでして、そのあたりに想いを
巡らすと、たちまちその時代に突き当ってしまいました。
100年前(明治43年)の社会では、社会主義者との疑いで幸徳秋水が逮捕されました。 鎌倉・
七里ヶ浜で逗子開成中学のボート部の生徒が、風でボートが転覆し全員溺死しました。その
少年たちを悼み「真白き富士の嶺」の曲が作られました。 時々加藤登紀子さんが歌っている
のを耳にします。 そして夏目漱石は朝日新聞に「門」を連載しました。
明治後期製織の夏着物「すずし」
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